
社保について知りたい歯科衛生士「社保完備の病院がおすすめ…ってきくけれど、そもそも社保ってよくわからない。社保に加入するメリットやデメリットを知りたいな。国保との違いもおしえてほしい。」
本記事ではこういった疑問にこたえます。
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漠然と「社保完備」がよい…とは聞くけれど、なんでだろう?…と思っている歯科衛生士さんは割と多いです。
この記事を書いている私は歯科医師です。

歯科医師になりたての頃、社保に加入せずに働いていました。
求人には社保完備と書いてあったのに、社保に加入できないこともありました。
社保のことが全く分かっておらず、今思うとかなり損をした経験があります。最低限の知識は必要なんだな…と痛感しました。
この記事では、歯科衛生士が「社保完備」で働くメリット・デメリット、国保との違い、「社保完備の歯科医院で働く方法」…を解説します。
この記事を読むと、社保完備の意味を理解できるだけでなく、社保完備の歯科医院で仕事をすることができます。
■ 本記事の内容
いつもは Twitter(ありがたいことに1万人以上の方にフォローしてもらっています!)で医療と介護の情報を発信しています。
社会人になった頃、いつか給料上がればいいなぁ…とか漠然と思っていたけどそんなことより、社保に入れない、残業代や有給ゼロ、雇用契約書がない、お昼休み=労働と啓蒙される…みたいな意味でわりと損した経験があるので、せめて会話が成り立つレベルの税金や制度の知識って必要だと今になって思う。
— しろたぬ@モグモグごっくん (@shirotanu_dds) April 7, 2021
『社会人になった頃、いつか給料上がればいいなぁ…とか漠然と思っていたけどそんなことより、社保に入れない、残業代や有給ゼロ、雇用契約書がない、お昼休み=労働と啓蒙される…みたいな意味でわりと損した経験があるので、せめて会話が成り立つレベルの税金や制度の知識って必要だと今になって思う。』
社保とは?
メリットとデメリットを解説する前にまずは簡単に「社保とは」を説明していきます。
『社保』とは『社会保険』を略した言葉です。
社保は病気や高齢、失業、災害、介護などに対しての補償の役割を担う国が定める制度で、正社員や一定の条件を満たしたパートアルバイト非常勤の人が加入することができます。
大きい企業や大学が自前で設立している組合健保、中小企業が入るような協会けんぽ、 歯科医療に携わる人が入ることのできる歯科医師国保…など様々な団体があります。
社保完備とは
よく求人で見られる『社保完備』とは次の保険すべてに入ることができる(完備している)ということを意味しています。
✔︎ 【社保完備】で完備されているもの
健康保険:病気や怪我の医療費の一部を負担してくれる
厚生年金保険:高齢や障害になったときに給付金あり
労災保険:仕事中の怪我や病気に対して給付金あり
雇用保険:失業、育児、介護休業のときに給付金あり
※ 40歳以上はここに雇用保険が加わります。
しっかり保険に入りたい…と希望する歯科衛生士さんにとっては重要な働く基準のひとつです。
歯科衛生士が加入できる条件
以下のような病院で働く場合は社保に加入することができます。
✔︎ 正社員の場合
・自分を含め5人以上の正社員がいる
・法人化されている歯科医院
✔︎ パート・アルバイト・非常勤の場合
・正社員の3/4以上の労働時間または日数を働いている
・従業員が101人以上いる(2024年からは51人以上)
どれかひとつに当てはまっていると、その歯科医院は従業員を社保に加入させる義務が発生します。
逆に、この状況で社保に加入できないのは、むむむ…という病院だと判断できます。
歯科衛生士が『社保完備』で働くメリット・デメリット
つぎの通りです。
✔︎ メリット
①:怪我や病気のときにお金が支給される
②:出産のときにお金がでる
③:失業時にお金がでる
④:将来もらえる年金額が増える
✔︎ デメリット
・特になし。あえていうなら、手取りが減る。
少し詳しくみていきましょう。
メリット ①:怪我や病気でお金が支給される
万が一、病気や怪我をした時にお金が支給されます。
歯科衛生士は鋭利な道具を使ったりするので事故が起こりやすいです。
またパワハラやセクハラなどで精神的な苦痛を受けた場合でも当てはまります。
これは社会保険の傷病手当という制度で、今までの収入の約2/3の金額が最大18ヶ月支給されます
メリット ②:出産、育児中にお金がでる
出産の時にお金が出ます。
歯科衛生士という職業は圧倒的に女性が多く、出産や育児を経験するライフスタイルになりやすいです。
産休(出産予定日まで6週間〜出産後の8週間)、育休(出産翌日から一歳になるまで)を利用して休養できます。
その間給料の約2/3をもらうことができます。
あとで解説する国保(国民健康保険)では育休制度はありません。(出産予定月の前月の4ヶ月は産前産後期間として保険料免除することは可能)
メリット ③:退職、失業時にお金がでる
退職や失業した時にお金が出ます。
原則としてやめた日の翌日から1年間もらうことができます。
年齢や勤務年数によって金額が異なりますが月給の50〜80%くらいもらいます
メリット ④:将来の年金額が増える
社保に加入していると将来貰える年金額が増えます。
国保だけの場合と比べて年金を上乗せしてもらうことができるからです。
国民年金の平均受給月額は約56,000円、厚生年金の平均受給月額は約14,5000円とかなりの差があります。
デメリット:手取りが減る
社保に加入するデメリットは毎月の手取りが減るということです。
国保に比べて手厚い保険料を払っているので、 そのぶん毎月の負担は増加します。
個人個人の状況によって、総支給額の約15%〜20%ほどが社会保険料です。
月収30万円の場合、毎月4万〜5万円が社会保険料で天引きされます。国保の場合は2万〜3万円です。
国保との違い
大前提として、国保(= 国民健康保険)は社保に加入している人「以外」、全員加入しなければいけません。
つまり、社保の加入条件を満たさない病院で働く歯科衛生士は全員「国保」に入ることになります。
✔︎ 社保と国保の違い
・社保の料金は本人と病院が折半して支払い、国保は本人のみの負担
・社保は配偶者や親を扶養できる、国保はひとりひとり保険料を支払う
・社保には傷病手当金と出産手当金の給付がある、国保にはない
くわえて、先ほども紹介しましたが将来もらえる年金額も社保の方が多くなります。
労働者として働く以上、自分を守るためには社保の方が有利です。
条件を満たしているのに「社保なし」の場合
社保加入の条件を満たしている歯科医院は、従業員を社保に加入させる「強制事業所」です。
そのため条件が整っているのに、従業員が社保に入れないのはおかしいです。
その場合は3つの方法があります。
①:院長に交渉する
②:管轄の機関に相談する
③:環境を変える
詳しくは 【なぜ社保に入れない?】「社保なし」の歯科衛生士が社保に入る方法で解説しています。
過去に私も、交渉はしてみたけれど社保に全く加入させてくれなかった…という経験があります。
社保完備のちゃんとした歯科医院で働く方法【結論:求人サイトを活用する】
最後に社保完備の病院を見つけるコツをお伝えしておきます。
結論から言うと、以下の通りです。
・求人数が多い求人サイトを使う
・社保完備で検索できる求人サイトを使う
・事前情報をしっかりゲットする
求人数が多い
歯科衛生士向けの求人サイトを使うときは求人数の多いサイトを使いましょう。
求人が多ければ選択肢も広がるからです。
常時1万件以上の求人は欲しいところです。
『社保完備』で検索できる
検索条件で「社保完備」で検索できるサイトを使いましょう。
効率的に探すことができます。
今は『社保完備』以外にも、細かい条件で検索できる求人サイトもあります。
✔︎ 『社保完備』以外の検索例
・オープニングスタッフ
・年収500万円以上可能
・専門医、認定医在籍
・18時までに退社可能
事前情報をしっかり調べる
事前に病院内部の情報をリサーチしましょう。
入ってみたら全然違った…という状況を防ぐためにはエージェントに介入してもらうというのも一つの手です。
違っていた場合でもアフターフォローしてくれます。
いまは「内部の人間関係」や「院長の性格」などを事前に教えてくれる求人サイトもあります。
✔︎ 自分にあった求人サイトを使うのは重要
歯科衛生士向けの求人サイトは山ほどあるので自分に適した求人サイトを使うことが大切です。
このあたりは 歯科衛生士向け求人サイトの選び方+おすすめ3選【失敗したくない】で解説しているので興味のある衛生士さんは参考にしてみてください。
『社保完備』は自分を守る
以上、社保のメリット・デメリットを解説してきました。
結論、社保に入れるなら社保に入りましょう。
以前、社保に加入できないだけでなく残業代や有給も出ない病院で働いていたことがあります。今考えると、かなり危険な環境で働いていたな…と思います。
自分を守るためにも税金や保険の知識はある程度必要です。
歯科衛生士はやりがいのある仕事ですが、事故とも隣り合わせです。安全安心に働くことができる環境を整えて仕事してください。
自分の心と身体の健康が一番大切です!
今回は以上です。