「自分が病院を継がなかったら潰れてしまう…でも…」と思ったことはありませんか?
親が歯科医師のような、いわゆる「2世の先生」にとっては、親の家業をつぐかどうか迷うケースはわりと多いのではないでしょうか。

この記事を書いているわたしは歯科医師です。
父は歯科医師として、地方で歯科医院を開業していました。
その父が急逝し、結果として、歯科医院を閉じることに決めました。
この記事では、父の歯科医院を閉院させた息子の「閉院当日の気持ちや様子」を紹介します。
人生の岐路は突然やってきて、なにより「焦り」ます。
・親の病院を継ぐか迷っている
・継がなきゃいけないんだよね?
・なんとなく準備した方がよいよね…
…このような「2世にはいずれ来る悩み」を抱えている方の参考になれば嬉しいです。
※ 父が亡くなってからそろそろ時間がたったので、メモに書き残しておいたものをブログに書き残しています。
■ 目次
40年続いた父の歯科医院を閉院させた話【閉院する当日の気持ち】
「憂鬱」に尽きる
一言でいうと「憂鬱」に尽きます。
色々な気持ちが複雑に混ざっていたからです。
・最後までどうするか迷った
・スタッフにクビを伝えなければいけない
…こういったことから、最後の最後まで頭が出がらしになるぐらい考えぬきました。
決断そのものには後悔していませんが、「人に伝えなけらばいけない」ということに関して憂鬱でした。
院長が亡くなって、いきなり現れたぽっと出の2世に「病院閉めます」と言われた時のスタッフさんの気持ちはどうなのかな….。
なんだか「死刑宣告しにいく気分」…などと考えていました。
とはいえ、昨日までに「閉院する」..という結論はでていたためか、昨晩はよく眠れました。
告知時間は11時
告知した時間は11時です。
その時間にスタッフさんに病院にきてもらうことにしていました。
11時にした意味は特にありません。
当日、まずは朝ごはんを8時頃に軽めに食べました。
その後本当はゆっくり診療室にいってみようかな…と思ったのですが、
朝から税理士に電話をしたりいろいろやることがあり、バタバタしていました。
結局10時40分頃に着く感じになり、ローソンでおにぎりセットを買って、診療室に向かいました。
告知
集まったもらったのは、
・パートの歯科医師の先生 2人
・常勤の歯科衛生士さん 1人
・パートの歯科衛生士さん 2人
・歯科助手さん 1人
…の計6人です。
正直緊張しました。これを言ってしまったら病院が終わりなんだなと。
11時になり意を決して、レントゲン室の前の小さなスペースで、
「閉院することになりました」
…と伝えました。
反応としては、全員が「そうですか。わかりました」という反応でした。
思ったよりあっさりした反応で、言葉を選ばずに言うと拍子抜けと言うか、そんな気持ちがホッとする気持ちと混じり合いました。
それ以外言えなかったのかもしれません。
✔︎ 余談
病院を閉院すると伝えた直後、ユニットの動かし方をスタッフにききました。
これは今後もし、病院を誰かに貸したりしたときに操作方法を知りたかったからです。
そのとき、ユニットが起動しなかったんですよね。
スタッフさんが「あれ?いつもならこうやると起動するのに」とアームを動かしても動かさない。
父が怒ってるのかな…なんて思いつつ、みんなで色々やっていると、「コンプレッサーが起動していないだけ」…ということに気付きました。
ビックリしました…
閉院を伝えた直後…
頭のモヤは晴れた…気がする
モヤは晴れた気がします。
なぜなら、方向性がやっときまったから。
ここ一年ほど、ずっと「左か右か」で悩んでいたので、方向性が決まった…という意味でスッキリしました。
これで、この地に歯科医師として戻ることはない…ということは確定したので(少し寂しいですが)、ずっと悩んでいたことから解放されました。
これからは、「医院をテナントで貸す」ことに注力します。
控室から笑い声
告知したあと、しばらくして控室からスタッフさんたちの笑い声が聞こえました。
何を話していたかはわかりませんが、よかった…と思いました。
そんな重くなかったのかな、重かったとしても前を向いてくれたらいいな、と。
仕事がなくなるわけなので、新しく転職活動をしなければなりません。大変だと思うけれど頑張ってほしい、と心から思いました。
その後、最後の挨拶をして終わりました。
疲れた…というのが正直なところです。
閉院する当日にやったこと
当日にやったことは次のとおり。
・閉院の宣告
・守秘義務の紙を記入してもらう
・カギの返却
・退職金をわたす
・今後を伝える
…です。
閉院の宣告
上述したように「病院を閉院する」ことをスタッフに伝えました。
守秘義務の紙を記入してもらう
一応、守秘義務の紙は書いてもらいました。
もちろん、信頼はしています。
ですが念の為、患者さんのことを他言したり、病院の中のことを他に話したりしないように書面に残すようにしました。
カギの返却
ベテランの歯科衛生士さんに病院のカギを預けていたので、返却してもらいました。
退職金をわたす
退職金は、雇用契約書がなかった(見当たらず)ので、規定はありませんでした。
相場もわからなかたので、税理士さんと相談しつつ「給料2ヶ月分とプラス次の月分1ヶ月」をそれぞれにお支払いしました。
(こんなにもらえるんですか?と驚かれましたが、地域によって相場がちがうと思います)
今後を伝える
私が心配することではないかもしれませんが、
・後日、離職票を渡すこと(失業保険をもらうため)
・転職活動をしてほしいこと
・退職日(数日後)まで病院の手伝いをしてほしいこと
…を伝えさせてもらいました。
退職日まで数日あるので、患者さんへ連絡したり、病院のことを教えてもらわなくちゃ…。
また、病院のことで何かわからないことがあったら連絡してもよいですか?…ときくと、みなさん快く承諾してくれました。
ありがたや。。。
まとめ:勝手に感じた「時代を動かした感」
これで病院は閉院です。
とはいえ、これからやることは山ほどあるのです…。
患者さんへの連絡、厚生局、歯科医師会、保健所、役所…
普段は遠い所に住んでいるため、残務はなかなか大変そうです。
でも、方向性が、決まってよかった。
あっ、病院を出ようとしたとき、電話が鳴りました。でもなんか…でれなかった…。
ありがとう、父の病院。