【自宅に歯医者】訪問歯科とは?”訪問歯科”という言葉を初めて聞いた人に、まずは読んでほしい話。

この記事のテーマ:訪問歯科って何?

どこからか”訪問歯科”という聞き慣れない言葉を耳にして「訪問歯科って何?」と思って調べている人向けに書いています。

”そもそも訪問歯科って何?”
  ↓
”どうやって見つけるの?”
  ↓
”依頼の方法・受診までの流れ”

大きくはこのフローで書いていまして、くわえて「できること(治療内容)」「費用」あとはボクが思いつく限りの疑問点について紹介してみます。

歯医者に通えない人(介護が必要、身体が不自由)の歯のトラブルをこんなにスムーズに解決できる方法があるということを知ってもらって、1人で多くの人が実践してくれたらマジで書いた甲斐あります。

想定読者:”歯医者に通えないひと”の”お口”のトラブルを解決したい人

想定する読者さんは、身近に介護の必要な人(例えば認知症であったり身体が不自由であったり障害を持っている人)がいて、その人の口や歯に何かしらのトラブルがあったら困ってしまう人たちです。

もっと具体的にいうと通院困難な人にかかわる家族や介護、医療従事者のみなさんです。

あと、身内に70歳以上の高齢者がいる人ような、通院困難になるかもしれない高齢者・・・・・・・・・・・と暮らしている人の頭の片隅にまで記憶されたら嬉しいです。

逆にゴリゴリの医療、介護のお仕事をされていて訪問歯科にどっぷり関わっている人たちにとっては、多分読んでも「あぁそれね」という感じだと思います。

※医療系の専門用語はほぼ使っていません。少しだけ長文ですので、わからないところだけ下の目次からタップしてざっくり確認するのもよいかと思います。

この記事を書いているボクは、歯科医師になってから10年以上、高齢者や認知症患者さんの訪問診療をしてきました。”通院困難な人”を対象に口や喉の治療をしつつ、大学で”高齢者の歯科治療”を教えています。

ほぼ毎日、介護施設や精神病院、急性期病院、個人宅を訪問しています。お手伝いをさせてもらった病院は50医院くらいあり、多分2000人くらいの患者さんを診察してきました。たくさんの医療従事者の方とお仕事させていただいています。

Twitter で情報発信しています。一応信用の担保になれば嬉しいです 。

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訪問歯科とは”自宅に歯医者さんが訪問する”こと

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訪問歯科とはその名の通り”自宅に歯医者さんが訪問する”ことです。歯科往診と呼ぶ場合もあります。

訪問した先で診療することを”訪問歯科診療”といいます。

対象者。だれが利用できる?

どのような人が訪問歯科診療を利用できるかといいますと” 通院困難な人 “です。

で、通院困難な人っていうのはどういう人かといいますと、冒頭にもあげた”認知症”であったり”身体が不自由”であったり”障害を持っている”ような自分の力で歯医者さんに行くことができない人のことをいいます。

今までは歯医者に通院することが当たり前でした。自分で歩いて歯医者さんに行ってそこで治療をしてもらう。

ですが人は高齢になってくると身体の機能が低下してきます。もし足腰が弱り自分で通うことが難しくなってしまうと、たとえ歯が痛くても入れ歯が合わなくても歯医者さんに診てもらえない状況になってしまいます。

"歯そのもの"も年齢とともに弱くなり歯周病や虫歯で抜け落ちてしまいます。そのため本当は高齢になったからこそ歯の治療が必要になることも多いのです。

そこで訪問歯科診療という医療サービスが誕生しました。実は誕生してからもう何十年と経っています。それでもまだあまり知られていませんが、これからの高齢化社会では必ず必要とされる分野だと思っています。

あっ、歯医者に行くのが面倒くさい、みたいな理由だけで呼ぶことはできません。あくまで通院困難な理由が必要です。

どうやって探すの?見つけ方3つ。

依頼してみたいけど、どうやって探してよいかわからない。そんな時はこれから紹介する3つの探し方を試してみてください。

1つ目は” ケアマネージャーさんに聞く “です。

通院困難な人は介護を必要とする人が多いです。そこにはケアマネージャーさん(以下ケアマネさん)と呼ばれる介護を支援してくれる人が深く関わっています。

そのケアマネさんに聞くのは1番有効な方法だと思っています。もし訪問歯科について知っていれば紹介してくれます。

ただ、地域によってはケアマネさんでも知らないことがあるので、その場合は次にいきましょう。

2つ目は” インターネットで調べる “です。

検索のワードとしては”住んでいる市町村名  訪問歯科”がよいかと思います。

最近は少しずつ訪問歯科診療をおこなう歯医者さんも増えてきたので、ヒットすると思います。

複数出てきた場合はどうしたらよいかといいますと、下でも少し書きますが、”家から近いか"まずは検診をやってくれるか””対応が丁寧か”で絞り込んでいくとよいです。

3つ目は” かかりつけの歯医者さんに聞く “です。

もしかかりつけの歯医者さんがいる場合は、そこの受付さんに訪問歯科をやっているか聞いてみてください。先生の人柄を知っていれば安心ですよね。ただ、これも家から近場がよい方が職場の近くなどの理由で家から離れているときはやめたほうがよいです。

で、なぜか近さが重要かといいいますと、病院から16km以内(直線距離)の範囲でしか訪問歯科診療ができないと法律で決まっているからです。

そのためいくらかかりつけがあったとしても、例えばその病院が職場の近くなどで自宅から16 km離れてしまっている場合は治療をうけることができません。

あともし急に痛くなったりしたときの対応も近いと早く来てもらうことができますよね。

他にも地域包括支援センターに聞く方法もありますが、上で紹介したケアマネさんに聞くのとインターネットで検索するというの方法が一番効果的ですのでやってみてください。

それでもダメなときはTwitterでDMください。

あと病院が法人なのか個人なのかはあまり関係ないと思います。

そもそも依頼するような状態なのか。

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そもそも依頼するような状態なのかどうかというのは判断に迷うところだと思います。

ただ「迷っている」という状況は、何かしら歯に関する訴えがあるはずですので、もし"判断が難しい"という状況ならば一度診てもらうほうがよいです。

今は検診を無料でおこなっている歯科医院も多くあるので、まずは検診してもらってその後どうするべきか話を聞くのもお勧めです。

さっきの検索ワード(市町村名 訪問歯科)に” 無料検診 ”か” 無料健診 ”というワードを付け加えて検索してもみると絞り込めます。

電話する際は「訪問歯科希望です」と伝えれば話がスムーズに進みます。

あと個人的にボクはいきなり家に来られることに抵抗があるので、最初に外で説明してもらったりすると嬉しいと思ったりします。似たような人はお願いしてもいいかもしれないです。

どんな治療ができるの?

歯の症状を思い浮かべてみてください。いま頭の中に思い浮かんだ症状の治療は訪問診療ですべて可能です。歯を削る道具やレントゲンは自宅までもっていくことができます。

治療可能な症状をあげておきますね。

・歯が痛い
・歯がかけた
・歯がしみる
・歯に穴があいた
・歯ぐきが腫れた
・歯ぐきから血が出る
・歯がグラグラする
・銀歯が取れた
・差し歯が取れた
・入れ歯が壊れた
・入れ歯が合わない
・入れ歯をなくした
・口が臭い
・出血する
・顎が外れた
・ムセる
・食欲がない

どれかに当てはまると思います。

通院の難しい人の中には”もぐもぐごっくん”のパワーが弱くなっている人も多いので、そういう場合は"嚥下(えんげ)訓練"とよばれる、ムセや食欲不振に対する訓練や検査のできる病院を絞り込んでみるのはおすすめです。

インプラントや矯正、ホワイトニングも可能は可能ですが保険が適用されないということにくわえ、訪問歯科診療の対象となる高齢の患者さんからの需要自体がそもそも少ないです。

あと担当する先生の専門外の治療ときでも、大きい病院に紹介状を書いてもらうことができます。癌や難しい抜歯など。

自分で歯を磨くことの難しい患者さんも多いので、歯科衛生士さんのおこなう「口腔ケア」もかなり重要です。
>>参考:【効果と目的】「口腔ケアとは?」口腔ケアが必要な理由をピンポイントで書いてみた【歯科医師監修】

1人からでも来てくれるの?

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もちろんです。1人の患者さんを見るために訪問歯科診療サービスがあるといっても過言ではありません。

自宅でも治療することができますし、 老人ホームとかグループホームのような介護施設に入っている人も治療することができます。 病院に入院してる人でも大丈夫です。

訪問診療ができないのはデイサービスとか公民館のような宿泊施設がない所です。

特別な準備は必要?

事前に準備してほしい書類を歯科医院からいわれますので、基本的に心配することはないですがあげておきますね。

無料検診を最初に受ける場合はおくすり手帳、あとわかれば今までの病歴(これは口頭でもかまいません)これに加えて印鑑と引き落とし用口座を確認されることもあります。

診療が始まるときに必要なものは保険証です。医療保険証、介護保険証。あとは障害者手帳や療育手帳をもっている場合も提示してください。

色々書類が多くなりがちなので、最初はまず検診をしてもらって説明を受けるというのは安心かもしれません。

先生の感じも見れますので。

駐車場の有無や、家の目印などを確認されることもあります。

何人でくるの?

自宅に訪問する人数は基本的に"歯医者""歯科衛生士"の2人で訪問します。病院によってはアシスタントがついてきたりします。

診療が進んで症状が安定してくると歯科衛生士のみで訪問する場合もあります。

先生の経歴とか専門分野を知りたければ病院に聞いてみるのがいいと思います。性格的に合う合わないかは実際に会ってみないとわからないでので、何件か病院の候補があると安心だと思います。

さきほども書きましたが、家に入られるのが抵抗のある人もいると思いますので、事前に人数を確認してなるべく最低限の人数で来てほしいと依頼してもよいです。

費用は?お金はいくらかかる?

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現実的な話、費用はとても気になると思います。

"口の状態"
"保険証の窓口負担割合"
"診療する場所(自宅なのか施設なのか)"

訪問歯科でかかる費用はこの3つの要素から細かく分かれているので、一概に費用を提示することは難しいですが例を挙げておきます。

"保険証1割負担の人が自宅で治療 “した場合を想定します。

” 虫歯治療 “をした場合1回におおよそ2000円〜3000円前後の費用となります。

"歯周病の治療 “した場合も同じくらいです。

” 歯を1本抜いた “場合は2500円〜3000円前後です。

"入れ歯をひとつ作った場合"は最大で2万円ほど。期間は1ヶ月程度かかります。

保険証が3割の人の場合はこの3倍。自宅ではなく施設の場合は1000円ほど安くなります。

あとざっくりなイメージとして通院する場合に比べて訪問の場合は大体1000円から2000円程度高い(1割負担の場合)と思っておくとよいです。

国民健康保険、社会保険、介護保険、障害者手帳、これらは全て使うことができます。というより使わないと10割負担になってしまいますので必ず提示しましょう。

生活保護の人の場合は無料で受診することができます。

もっと細かい費用の概算を知りたい人は記事下にリンクを貼っておきますが、これで基本は十分だと思います。

交通費、キャンセル料は?



すべて保険でまかなえるので交通費はかかりません。

キャンセル料もかかりません。

体調が悪くなって当日キャンセルになることもよくあることです。

ただ、訪問したときに連絡なしで不在だとチーンってなります。

支払い方法

1ヶ月分の治療費をまとめて翌月に払います。

支払方法は病院によって決まっています。

"直接現金払い"
"口座引き落とし"
"(施設の場合)施設利用料に上乗せして引き落とし"

があります。

「現金直接払い」は次の月の診察日に前月分の料金を払うことが多いです。

治療の期間はどのくらいかかる?

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通常の歯科医院に通院するのと同じように治療内容によって回数は変わります。

治療の始まる前におおよその回数を確認してとおくことは重要です。

ケアプランの変更は必要ない

ここだけちょっと専門的になってしまうので「?」の人は読み飛ばしてください。

介護の必要な人でケアマネさんにケアプランを作ってもらいる場合、ケアプランを変える必要は一切ありません。歯科で使用する介護保険はケアプランと別枠です。

自宅から老人ホームに引っ越しても大丈夫?

自宅から老人ホームに移ったりとか体を崩して入院したりとか、そういうときも訪問診療を継続して受けることができます。

ただしここでも16kmのルールが適用されるので、遠方に引っ越してしまうような場合は難しいです。

あと老人ホームの場合は提携している歯科医院があるので、引き続き診療を希望する場合は施設側と一度話し合う必要があります。

基本的には患者さんが医者を選ぶ権利があるので、そのままの先生で希望すれば診察することもできます。

診療に家族の同席は必要?

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必ずしも必要ではありませんが、立ち会っていただくと嬉しいです。

自宅で歯科診療を受ける場合で患者さん本人が鍵を開けられる状態であれば一人でも可能ですが、 一人で鍵を開けるのが難しい場合は家族の立ち会いが必要です。

都合の良い時間を探して、訪問時間を調整するようにしてください。

家族が仕事などで日中立ち会うことが難しいと夕方以降で調整したり、土日などお休みの日に訪問することが多いです。

老人ホームなどで診療する場合は家族の同席は少ないです。

平日の日中に訪問することに加え、家族が遠方に住んでいる人も多いからです。

診療内容はケアマネさんや家族に報告書としてお渡し(送付)します。

診療の内容については患者さん本人だけでなく家族やケアマネージャーさんと連携して共有するので、何をやっているかは確認しやすいので安心して良いと思います。

1回の診療時間はどのくらい?

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治療内容だけでなく当日の患者さんの体調や口の中の状況にも影響します。

診療時間はだいたい10分から30分ほどの間です。

急に痛くなったら?

これは事前(検診のとき)に確認しておくことが重要です。

歯医者さんは早急に対応してくれるはずですが、予約制なのでその状況にも影響されてしまいます。

これも” 近さ “は重要な要素でして、現実的に家から病院が近ければ当日や翌日に対応しやすいです。

その他

薬が出る場合はその場で渡することができるので薬局に行く必要はありません。特殊な薬剤の場合は除きますが、ほぼほぼその場で渡せます。

あと診療の際にはお水や電源をお借りすることがあります 。

まとめ

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” 歯医者が自宅にくる “という制度があることはまだまだ知られていません。

歯科の診察を定期的に受けることは虫歯や歯周病の予防だけでなく、高齢の方の死因ベスト5に入ってくる “誤嚥性肺炎 “の防止にも効果があります。

それにそんな難しいことよりそもそも” 口の健康 “は” 食べる” ” 飲む ” ” 話す “など生活における重要な要素にかかわっていますよね。

本当は普段からメンテナンスすることが大切なんですが、 わかっていても大体は痛くなったり腫れてら受診することが多いです。

それでも治療を受けた後に「あぁやっぱり歯って大事だな」って思ってもらえれば、その後の歯や口の健康さらに全身の健康まで違ってきます。

どんな状況がきっかけでも歯科受診をしたという事実はとても素敵なことです。

実際に治療を始めて口の中を清潔にしただけで、 部屋の匂いまで変わった人もいます。

トマトのように赤かった歯ぐきが綺麗なさくらピンクに変わって、とても喜んでくれた人もいます。

歯医者としては、通院困難な人に一度歯の検診を受ける機会を設けてみて欲しい、と思います。

でも「とりあえず知っておく」だけで嬉しいです。それが1人でも多くに広まれば、めぐりめぐって誰かの痛みがなくなることにつながりますので。

費用のところで書いた「料金の詳細」を紹介した記事です。詳しく知りたい人は参考にしてください。↓
shirotanu.com

shirotanu.com

オマケ

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ボクの祖母はボクが高校生の時に認知症を発症し、しばらくして食べ物を食べられなくなりました。

その時は何がなんだかよくわかりませんでしたが、体につながれたチューブから栄養補給をしていたのだと後になって理解しました。

祖母はお寿司が大好きでしてボクに入れ歯を作ってもらうことをすごく楽しみにしていたのですが、僕が歯医者になったときは入れ歯を作れるような状況ではなくそのまま亡くなりました。

当時、訪問歯科診療は今よりももっとマイナーで、担当してくれた歯医者さんがどんな治療をしてくれたのかはわかりません。

きっと最後に大好きなエンガワを食べたかっただろうなぁと今でも思うことがあります。

「食べる」って当たり前のことのようで、実はものすごく幸せなことなんですよね。

ボクが” もぐもぐごっくん “の分野に進んだ大きな理由の1つです。※ちなみに” もぐもぐごっくん “は難しい言葉で言うと” 摂食嚥下(せっしょくえんげ)”といいます。

介護を必要とする患者さんが1回でも多く口から食事する時間が増えればいいな、と思って診療しています。

訪問歯科診療は多くの人と連携しなければ成り立ちません。

ケアマネさんや言語聴覚士さんお医者さん看護師さん介護士さん相談員さん栄養士さん・・・

いつも本当に助けられています。ありがとうございます。

これから高齢化が進み通院困難になる人は増えると思いますが、まだまだ訪問歯科の認知度は低いです。

特に” 歯科 “と” 介護 “の橋渡しをしてくれるケアマネさんともっと関わることができたらうれしいな、感じています。

1人でも多くの人に「あー訪問歯科ね」「頼んでみようかな」と思ってもらえたら幸せです。

追記して欲しいことがあればTwitterでおしえてください。

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