新型コロナウイルス感染症流行期における口腔ケア。今日から介護士さんや衛生士さん、ご家族にできること。そして歯科の役割。

2020年になって、新型コロナウイルスが流行しメディアでは歯科治療の危険性が取り上げられています。

今回はこの状況における口腔ケアをどのように行えばよいか訪問歯科診療をおこなっている歯科医師としてまとめてみました。

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(平常時での)口腔ケアの効果

まずは(平常時での)口腔ケアの効果をあげてみます。口腔ケアをおこなうことで色々な効果が期待できます。

・虫歯や歯周病の予防
・誤嚥性肺炎 の予防
・口の機能低下防止
・つばの分泌促進
・口臭の予防

今回の本題ではないので、興味のある人は以前の記事を参考にしてみてください。
>>参考:【効果と目的】「口腔ケアとは?」口腔ケアが必要な理由をピンポイントで書いてみた【歯科医師監修】

訪問診療で口腔ケアを受ける対象となる患者さんは『高齢』だったり『体が不自由』だったり『認知機能が低下』した通院困難な人たちです。

このような患者さんに口腔ケアをおこなうことで口の中の細菌の数を減らすことができます。そしてそれは誤嚥性肺炎の防止につながります。

特に嚥下障害があったり過去に肺炎を起こしている患者さんにとっては口の清潔を維持することは重要です。

私を含め訪問歯科を行っている先生や衛生士さんたちにとっては自分たちのミッションのひとつと言えるかもしれません。

依頼してくるご家族にも口腔ケアの重要性を認識する方達が少しずつ増えてきた印象があります。

しかし新型コロナウイルスの流行が拡大している今、口腔ケアを行うときには相当に慎重な対応が必要になっています。状況によっては中断を検討すべきです。

学会から発表されている指針を参考にしながら口腔ケアを行うリスクや注意点をお伝えしていきますね。【日本嚥下医学会http://www.ssdj.med.kyushu-u.ac.jp/new/detail/?masterid=113

口腔ケア。いま慎重な対応をすべき理由

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新型コロナウイルスが蔓延してる

冒頭にも書いたように、今は新型コロナウイルスの流行が拡大しているます。人と人との接触でさらに拡大を加速させる可能性が高いです。

実際、医療行為を通じて病院内での感染も報告されています。そのため十分な感染対策が必要です。

接触や飛沫を浴びやすい

口腔ケアをしている最中は医療者と患者さんの距離が30cm以内ととても近く、患者さん側からすると万が一医療者が感染している場合に感染リスクがあがります。

医療者側としてもかなりの近距離に接近するため飛沫を浴びやすい状況です。実際、嚥下障害のある患者さんを口腔ケアするときはむせが出ることは頻繁にあり、顔だけでなく袋やパクリ空気中にも多量の飛沫が舞うことは容易に想像できます。

どうしたら感染を防止できるのでしょうか?

感染を広めない一番の対策

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それは口腔ケアをおこわないことです。身も蓋もない話ですが、口腔ケアを中断することは有効です。

現時点において人との接触を断つことが感染拡大の防止につながることは間違いないからです。

感染が確定していたり疑いのある患者さん感染が蔓延している地域での不要不急の口腔ケアは避けるべきで、また必要と思われる患者さんに対しても PPE(個人防護具) を所持していない場合は避けるべきだと思います。

口腔ケアをおこなう場合の対策

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身も蓋もない話をしてしまいましたが、家族や介護さんが口腔ケアをおこなう場面は避けられません。

必要のある人や困っている人に対して口腔ケアを行う場合はどうすればよいのか。少しでも感染リスクを下げる方法を紹介します。

①消毒滅菌を徹底する

・うがいをする
・口腔ケア前後で手洗いを20秒以上おこなう
・0.2%ポピヨンヨードでうがいをおこなう(アレルギーのある人は禁)
・入れ歯は0.05〜0.5%次亜塩素酸ナトリウム、消毒用エタノールで拭く。(30分浸透が理想です)

現在は物資が不足気味です。とにかく無理をせずできる範囲でおこないましょう。

②PPE(マスク、グローブ、ゴーグル)を使用する

PPEとは個人防護具のことでマスクやグローブ、ゴーグルで感染からを身を守るためのものです。効果としてはかなり期待できるものです。

通常の歯科医院でも毎回この装備で行っているところは数が限られていると予測できるので、家族や介護士さんにとってfullPPEのような感染対策は在庫的にも知識的にも難しいです。

そして根本的にfullPPEの必要な人に対しての介入は現実的ではないと思います。日本嚥下医学会のHPに感染状況に応じた対応表があるので添付します。

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※E-PPEとは「サージカルマスク、手袋、フェースシールド or ゴーグル」
EB-PPEとは「サージカルマスク、手袋、フェースシールド or ゴーグル」
full PPEとは「N95 マスク、帽子、手袋二重、フェースシールド、ゴーグル、不浸透性長袖ガウン」

③歯科医師または衛生士から指導をうけ、実施は患者さん本人または介護者がおこなう

現在の歯科医療では予防の観点から指導をおこなうことができます(普段からおこなっていることがほとんどです)。

患者さん側として指導をうける際には次の④⑤⑥で紹介するような「時間」「場所」「姿勢」は必ず確認するようにしてください。

医療者側としては自立度の高い患者さんに対しては指導のみを行い、自分で口腔ケアしてもらうことが感染リスクを少しでも下げることができます。

自立度の低い患者さんに対しては家族や介護士さんに指導を行い、口腔ケアをしてもらうとよいです。

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④介入時間を短縮する

口腔ケアの時間を短くすることで感染のリスクを低下させます。

⑤口腔ケアの範囲を決める

短時間で口腔ケアするためには効率よく行うことが重要です。患者さんごとに重点的に口腔ケアしたい場所は違います。

例)
右下の奥歯を中心に汚れがたまる
入れ歯のバネの歯が出血する
舌が乾燥しやすい

予防すべき場所を特定し効率よく行うようにしましょう。

⑥正面に立たない

患者さんの真正面に立って(正対して)口腔ケアするのは避けましょう。

車椅子でもベッド上でもどんな体勢であれ脇からおこない、少しでも直接的な飛沫を浴びないようにしましょう。

⑦保湿剤を使用する

飛沫の飛散を最小限に留める意識を持つことはとてもとても重要です。保湿剤を用いることで飛散を軽減させることができます。

そのため積極的に使うことをオススメします。「リフレケア」という保湿ジェルはおすすめです。綿棒やスポンジで口の中に塗るだけです。保湿性が高く、”はちみつ””ライム””りんご”の3つから選べます。

ただ欠点もありまして、ベタつく感じに個人差があること、少しコストが高いこと、です。ですので最初はお試しで低コストのもの小さいサイズを購入してもいいかもしれません。ドラッグストアで販売しています。 

医療側としては口腔外バキュームを使うことで飛散を軽減させることができます。(訪問歯科で口腔外バキュームの持ち運びが現実的ではない場合は、ポータブルユニットのバキュームを使うことで多少の代用効果はありそうです)

患者さん本人、家族やケアマネさん介護士さん。介護に関わる人の判断。

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訪問歯科診療は患者さんから依頼があって行うものです。そのため行う意義を歯科医院に尋ねることは当然の権利です。

ケアマネージャーさんを介してもよいので今の時点で口腔ケアを行う必要性を確認し、 不急であれば中止をする検討ことも必要だと思います。

口腔ケアがコロナウイルス対策になるという考えもあるようですが、今の時点では具体的な根拠に乏しいです。
(口腔内には新型コロナウイルスの感染に必要なレセプターと呼ばれる外界からの受け口があり、口のなかを清潔にすることで感染が抑制できるのでは?という発表もありますが、あくまで可能性の話で今のところ証拠はありません。)

私も医療側として、そして訪問歯科診療に深く関わっている身として、不急の口腔ケアってなんだろう。。。と考えます。

口を開かない、拒否が強いなどでスタッフが介入できない場合や誤嚥性肺炎リスクがかなり高い場合、口腔ケアをしないことで広範囲に虫歯の広がるリスクのあるようなとき、そして家族が強く介入を望み感染対策ができる場合でしょうか。

こう考えてみると、患者さん側の希望がとても大きいということに改めて気付きます。

まとめ

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結局、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためには、積極的に行う理由がない場合は口腔ケアを中止することがお互いにとって一番安全・・・という身も蓋もない話になってしまいます。

正直、患者さんが減少することは私も含め歯科医院の経営だったりそこで働くスタッフさんの生活に多大な影響を与えることになります。そのため感染リスクと生活リスクの狭間で揺れている歯科医院は多いと思います。

自分としてはそれでも健康でさえあれば何度でもやり直すことができるはずで、この事態も感染対策についてしっかりと勉強するよい機会だと思っています。

やまない雨はない。明けない夜はない。みんなで協力して乗り切りましょう!

いつかこの記事を読み返したとき、「あーそんなことあったよね」と笑える日がくることを強く信じています!

>>参考:【効果と目的】「口腔ケアとは?」口腔ケアが必要な理由をピンポイントで書いてみた【歯科医師監修】

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